2015年5月18日月曜日

詩集『金魚』 前書き


うまれたてのことばを、どうぞ。

5年ほど前から寺で法座が開かれるたびに『浄勝寺だより』という、小さな寺報をこしらえて有縁の方々にお配りしています。その中で、読んでホッとする、生き生きとしたかんじが味わえるような子どもの詩(つぶやき)をひとつずつ紹介してきました。
それは主に灰谷健次郎とか鹿島和夫といった有名な先生がたが十年も二十年も前に見つけられて『せんせいけらいになれ』『1年1組せんせいあのねのね』などの本にまとめられた詩の借用でした。

しかし私たちはそれだけではだんだんと物足りなくなり、自分たち流に、現在の、この地域生活の中での、身近な新しい詩を見つけていきたいと思うようになりました。

ふと、身のまわりを見わたしますと、さいわい二人の娘たち(当時小二と小三)は学校の毎日の宿題として『生活ノート』に短い日記をつけることになっております。はにかみ屋のことですからなかなか親には見せてくれないのですが、最初の担任の先生方の御指導がすばらしかったのでしょう。子供の心がのびのびと広がっていったようです。良く読んでまいりますと、なかなか深い味わいの文句にぶつかるのです。最近ではそれらの"誕生したてのことば"を一つずつ寺報に使わせてもらっています。

このたび長女が小学校を卒業、次女も六年生に進級となりました。記念に二人の詩(のようなもの)を一冊にまためてみることにしました。『ノート』の原形を尊重しましたので読みづらい所も少なくないと思います。ご了承下さい。

                                            一九八九年(平成元年)四月 村上敏喜

詩集『金魚』より